有酸素運動とスタミナ
スポーツ競技においては、技術を支える「基礎体力」が絶対に必要です。パワーをつけたり、スタミナをつけたり、柔軟性を培ったりということです。
パワートレーニングは、瞬間的に発揮できる力を高めます。しかし、いくらパワーがあっても、すぐに疲れてしまっては競技に役立てることはできません。
そこで、スタミナ・トレーニングが同時に必要になってきます。スタミナは、競技時間をとおして、いかに持続できるかという能力(持久力)です。
長時間でもバテない持久力をつけるには、長時間のトレーニングをすることです。
しかし、技術練習をただ長時間行うのではなく、スタミナというものを別個に取り出してトレーニングすべきです。技術練習は、疲れながら行っても、逆効果の場合もあります。
あなたがスタミナ・トレーニングを行う場合、2種類に分けて考える必要があります。
一つは筋肉に視点をおいた「筋持久力」、もう一つは心肺機能に視点をおいた「全身持久力」です。
筋持久力(=無酸素的なスタミナ)
無酸素的な運動を、長時間持続することは不可能です。筋肉内に乳酸がたまってきて、筋肉が動かなくなってきます。
しかし、無酸素的な運動も、疲れたら休んで回復を待ち、また運動するということを繰り返すことで、筋肉内にグリコーゲンを貯蔵する能力を高めることができ、筋持久力を向上させ、無酸素的なスタミナを向上させることができます。
筋持久力を高めるには、器具を使わないで、自分の体重を利用したトレーニングが効果的です。
上半身の筋力を高めるための、誰でも知っている方法としては、腕立て伏せがありますね。これをできるだけ数多くやってみましょう。筋力がない人は数回しかできないかもしれません。その場合は膝をついて行えばいいのです。限界までやったら休憩をはさんでまた挑戦します。これを何セットかくりかえします。
はじめは、すぐに腕がしびれて動かなくなっても、トレーニングを積んでいくと、だんだん回数が増えていきます。上腕筋を中心とした筋持久力が向上したということです。
そのほか腹筋・背筋・大腿四頭筋といった大きな筋肉を鍛えると効果的です。たとえば腹筋は床の上での上体起こしを数多くこなします。背筋はうつぶせの状態から反らす運動を繰り返します。背筋上部なら懸垂を繰り返します。大腿四頭筋を中心とした大腿部はスクワットを数多くこなします。
このように、低負荷の筋力トレーニングをできるだけ数多く行うことによって、筋持久力は養われます。
10回程度しか繰り返せない高強度の筋力トレーニングは、パワーはついても筋持久力の訓練にはなりません。
全身持久力(=有酸素的なスタミナ)
もう一つの持久力は全身持久力です。有酸素的なスタミナであり、長い競技時間をとおして高いパフォーマンスを維持することができるようになります。いいかえれば呼吸循環系能力であり、これは肺や心臓、血管の能力です。
有酸素運動のトレーニングを積んでいくと、一度に酸素を取り込む量(最大酸素摂取量)が向上するので、ちょっとのことでは息切れしなくなります。
心臓も大きくなり、一回の拍出でより多くの血液を全身に送り出せるようになります。ということは、酸素をより多く全身へと供給できるということであり、心拍数を多くしなくてもよいということになり、心拍数が減少します。
有酸素運動のトレーニングを積んでいくと、血管平滑筋がリラックスしやすくなり、柔軟性が増すので、血流が速くなっても、血管を圧迫せず、血圧をさほど上げなくても運動ができるようになります。
さらに、末梢の毛細血管の数が増えて、血液の通り道が増えるので、それだけ取り込んだ酸素が速やかに、効率よく届けられるようになります。
少ない酸素からでも、効率よくエネルギーを生み出せるようになるのです。
有酸素的なトレーニングを積むことによって、比較的激しい運動においても、体脂肪をエネルギー源として利用できるようになるといわれています。
運動中に体脂肪が尽きてしまうということは、まず、ありえないので、この体脂肪を味方にできれば、たいへん心強いといえます。
ふつうでは無酸素運動になってしまうような、長く続けることができない激しい運動でも、有酸素運動の能力を高めていけば、有酸素的なエネルギーを使って運動を持続していくことができるようになるのです。
有酸素的なエネルギーを使えるということは、疲労物質である乳酸を生じないので、さほど疲労もおぼえず、長く続けられるのです。
よって、最大限のパワーは無理としても、ある程度の激しい動きの場合でも、有酸素的なエネルギーを利用することができれば、長時間の競技において非常に有利になります。
有酸素運動能力が高まると、筋持久力の面でも、乳酸がたまりにくくなり、筋持久力の向上が期待できます。ですから、有酸素運動のトレーニングを行うことによって、ただ腕立て伏せだけを繰り返すよりも、さらに数多くをこなせるようになる、ということです。
以上のように無酸素的なスタミナと有酸素的なスタミナは相互に関連しあっているので、できるだけ両方を行うほうが効果的です。
また、技術を身につけるには繰り返す必要がありますが、繰り返し練習する際にも、ある程度のスタミナがないと筋肉も疲れてきて、呼吸もすぐに苦しくなってしまいます。
技術練習をスタミナ・トレーニングと混同すべきではありませんが、スタミナがつけば、技術練習により多くの時間を割けるようになります。