筋肉は脂肪を燃やすエンジン
いまだにトレーニング現場では、脂肪と筋肉の関係について意見の相違があるようです。
脂肪が筋肉に変わり、筋肉が脂肪に変わると主張する人がいれば、脂肪と筋肉は材質からして異なるものなので、相互の変換はありえないと主張する人もいます。
これについては、それぞれ言い分や体験談などがあって、簡単には手打ちにならないようです。
脂肪について
ダイエットというとすぐ、ただ単に脂肪燃焼とひとまとめにして考えてしまいますが、ダイエットにおいて燃焼させる目的の脂肪は2種類あります。
白色脂肪細胞に分類されるこの脂肪のひとつは皮下脂肪、もうひとつは内臓脂肪です。
成人病などの引き金になるものは内臓脂肪で、これはその名の通り内臓につく脂肪を指します。
内臓脂肪は運動によって燃焼されやすいのですが、逆に、カロリーオーバーなどの際に蓄積されやすい脂肪です。 そして、内臓脂肪は健康な状態以上に蓄積されていても体型に現れないこともあるので、検査をして初めて知ったという方も多いのではないでしょうか。
一方、皮下脂肪は皮膚のすぐ裏についていますから、多量になれば、体型の崩れとしてすぐにわかります。
もちろんこれらの脂肪は、運動や生命維持のエネルギーとして使用するために脂肪細胞内に貯蔵蓄積されているもので、筋肉の材料であるタンパク質ではありません。
従って、脂肪が筋肉に変わるという説は考えにくいところですね。
筋肉について
通常トレーニングをする筋肉は骨格筋と呼ばれ、多核の横紋筋で随意筋と分類できます。
これは、自由に自分の意思によって動かすことのできる筋肉で、その筋肉の細胞は細胞核を複数以上持っているということになります。
ちなみに血管も筋肉ですが、こちらは細胞核がひとつだけの平滑筋に分類されます。
そして、この筋肉の肥大するメカニズムについて最新の研究ではこの骨格筋の筋繊維表面に存在している筋衛星細胞が、筋繊維が傷ついた際に細胞分裂を活発化し、その傷ついた筋繊維を修復、および既存の筋繊維に融合して肥大するということがわかっています。
この際に骨髄で作られて血液中に存在する筋幹細胞とともに傷の修復作業を行なうということもわかってきました。
従って、このような筋肥大のシステムに脂肪細胞が関わる余地はないですね。
また、筋肉は日常的にカタボリック作用を受けて分解されています。
これは、筋肉トレーニングをしている際にも筋タンパクの合成と分解がなされていることが確認されていますから疑いようの無い事実でしょう。
従って、筋肉は分解されて減っていくもので、脂肪に変換されるものではないと考えられますね。
まとめ
以上のことからも、脂肪と筋肉の相互変換はあり得ないと考えるべきだと思いますが、脂肪と筋肉は変換するとした意見についてもなぜそのような考えに至ったのか理解できなくもありません。
例えば、運動をする際には脂肪があるほうがエネルギーの不足に陥りにくく、運動によるカタボリック作用での筋肉の分解を防げるのではないかといったことや、筋肉の上に皮下脂肪が乗っかっているほうが筋肉が大きく見えて、いかにも成果が上がり筋肥大したように見えるのではないかなどの理由が考えられます。
また、運動によりダイエットをしていた人が突然運動を止めれば、筋肉量が低下することは当然のことですし、それによる脂肪の燃焼量も減っていくわけですから、あたかも筋肉が脂肪に変わったように見えても不思議はありません。